2024.8.23

建築士 金城健雄のけんちくどんどん vol 03:ヒンブン


映画「THE FIRST SLAM DUNK」を観た方は、宮城リョータの実家を思い浮かべてください。石垣に囲まれた屋敷の入口の内側に屏風のような壁がありましたね。
そうあれが、ヒンプンです。(観てない方は復活上映中なのでお早めに!)


沖縄の古い民家の屋敷の入口には門扉がありませんでした。親族同士が近くに暮らすスタイルの村落が多かったため、その当時はオープンでよかったんだと思います。ただそれでもやはり、日々の営みがありますから多少のプライバシーや台風時の強風を遮る機能的な役割と、マジムン(前回のコラム参照)から家を守る魔除けとしての役割がヒンプンにはありました。
家と外の世界を閉じずに緩やかにつなげるヒンプンの手法は、沖縄で暮らす上でのアイデンティティーに通じると感じます。来るもの拒まず、なんでも受け入れて取り込むチャンプルー文化がそうであるように。




近代になり新築する住宅では、だんだんと敷地も狭くなったため、場所を取るヒンプンは採用が難しく、セキュリティーを重視した門扉を設けることが当たり前になりました。
また、古くから残っている民家でも、駐車スペースを確保するために、取り壊されその姿を残す家は少なくなっています。


しかしながら、その解釈を活かしつつ現代的にアレンジしている例も最近では多く見ることができます。
私たちが提案するマンションでも敷地の条件によっては、建物と道路の境界に目隠しや緩衝体として設けることがあります。それは建物のサイン壁として機能すると同時に、エントランスに向かう動線を緩やかにガイドする役割を果たしています。